臨床研修制度の失敗その2

俺は1年目の時からずっと手術記録を書き続けている。これは本来なら下っ端の仕事なので、そろそろ免除してほしいのだが、いまだに書き続けている。あの忌々しい臨床研修制度のおかげで、いまだに私は最下層なのである。

初期臨床研修医という名のローテーター、別名ジュニア・レジデントはいる。でも手術記録は書いてくれない。彼らは第2助手として手術に入るが、何も見えていない、何もわかっていないと思う。いや、わかっていないということすらわかっていないだろう。手術記録を書くときに初めて、何もわかっていなかったと認識するものなので、手術記録を書かない彼らには、そんな認識すらないだろう。そして解剖や手術の手順を勉強するのは、手術記録を書くときしかないのに、そんな機会すら彼らは逃し続けている。

私が働き始めたころだって、何も判ってなくて、何も見えなくて、手術記録を書くのに恐ろしく時間がかかり、最終的には手術書を丸写ししただけになり、オーベンに原型をとどめぬほどに修正されたもんだ。ちなみに、ある有名な手術書は、腹会陰式直腸切断術の会陰操作がジャックナイフ位になっていて、これを丸写しした馬鹿野郎はこの私だ。いまだに会陰操作は砕石位しか見たことがない。今思えば、大学のオーベンはみんな俺たちの遅筆によく付き合ってくれたもんだ。今なら判る、オーベンらにとっては、俺たちに書かせるより、さっさと自分で書いてしまったほうが余程ラクだったんだなと。

教えるのには凄くエネルギーが要る。今のローテーターのジュニア・レジデントの皆さんに、手術記録を書かせるなんていうエネルギーは俺には無い。手術記録なんてさっさと書いてしまってさっさと帰りたいのである。特に今日のような週末はね。