『日本経済に関する7年間の疑問』 村上龍

久しぶりに村上龍のエッセイを読んだのであるが、ああ俺って彼に多大な影響を受けたのだなあと思った。
彼の本を読むようになったのは中学生のころで、それは『北野誠サイキック青年団』に示唆されてのものである。
彼のメッセージの数々、「私は他人には期待しない」、「マスメディアは新しい時代を報道する文脈を持っていない」、「私は自分の仕事を良くするために努力するだけだ」は私の体に刻みこまれている。私は、マスメディアを信用してはいけない、自分の価値を高めてなるべく他人や組織に依存しないようにしなければいけない、情報に飢えるのは不幸であるが生き延びるために必要である、というように彼のメッセージを解釈して生きてきた。
彼が称賛した同時代のヒーローは野茂英雄中田英寿イチローであるが、彼らに共通するのは寡黙でずばぬけて能力が高く、うわついてなくて、ただ己の悦びのために努力し、そして自由で苦労の痕跡がないという点である。要するに彼らはとんでもなくかっこよくて、僕らの世代のヒーローなのだ(今日のどっかの新聞で安倍総理は彼らに比べてかっこわるいから若い世代の支持が得られないだか何だか書いてあったな)。村上龍は時代のそういう気分と本能的に同調していたのである。
また村上は10年以上前からマスメディア批判を行っており、その影響下にあった私にとって昨今の医療報道の頓珍漢ぶりは不思議なものではない。本書でもそのことが露骨に書かれている。さらに、昔に比べれば日本の医療は格段に良くなっており医療ミスのリーク合戦を見て過去を懐かしむのは危険であるという常識的な意見も書かれていて医療従事者にとっては新鮮である。