当科では指導医とシニアレジデントが執刀あるいは前立ち(第1助手)、ジュニアレジデント(初期研修医)が鈎引き(第2助手)というのが手術の基本である。
私のオーベンの多くは前立ちに対する要求は少なくて、ただ早く結紮することぐらいである。
そのかわり場作りする鈎引きは大変で、よく怒られる。
優しい前立ちであれば場作りもけっこうやってくれるから鈎引きもラクだ。
最近の風潮はジュニアには優しくである。とにかく研修医を集めなければいけないから体育会的なノリや軍隊式教育は慎まねばなりません。
また研修医獲得競争に敗北した当院では、今後鈎引きなしで手術することも多々想定される。
だから最近は前立ちががんばることが多いのである。そして研修医は手を出せずに見ていることが多い。

そういう事情もあって、研修医の低レベル化が着実に進行している。
彼らの仕事は言われるままに鈎引きする(それくらい学生でもできる)、退院サマリーを書く(カルテをコピペするだけ)ぐらいになってしまっておる。
俗に言う研修医の御客様化、研修のポリクリ化である。
1年ほど前まではもっといろいろやってくれていたのだが、徐々にそんな風になってしまった。
私は30人以上の研修医の先生たちといっしょに仕事をしたが、間違いなく無脳化しつつある。
簡単な指示を出すのにいちいち上級医に確認する人が増えている。
少しややこしい指示なら上級医がするだろうと放置されていることも多い。
病棟の看護師もそれを察知して最初から上級医にコールすることが多くなっている希ガス

これは当院だけなのか?当科だけなのか?

私はストレート研修組だが、私の同級生や先輩にはスーパーローテートした者も多数いる。
彼らは同級生に対して2年のビハインドを負うリスクを自覚していた。
そしてそれ以上の研修をするという意欲を強く持っていた。
有名病院の物色、就職活動も熱心に行っていた。その中にはかの有名な舞鶴市民病院も含まれていた。

いやおうなくスパーローテートを選択しなければいけない研修医が彼らに劣っているのは必然である。
自分の選択する診療科について同級生に対して2年のビハインドを背負うリスクが彼らには無いのである。
それは個人の資質の問題ではありえない。

個々の研修医がどうなろうが知ったことではないが、この医者不足の時代にほぼ全ての医学部卒業生が最初の2年間を無駄にする意味はでかい。
医学部教育においていかに臨床をたくさん学ぼうが、卒後2年間さらにポリクリしていたら関係ないのである。