ケインズの理論を平易に解説し、その矛盾点の解消を試みる書。
完全雇用を前提とする新古典派に対して、需要不足から不況を説明するケインズのほうが、失われた15年を過ごしてきた日本人にとってはなじみやすいですね。

流動性選好とか流動性の罠とかなんとなく理解していた言葉が丁寧に解説されており勉強になった。もちろん時間選好とかえーとえーとその他もろもろ十分理解できたとはいいがたいのですが。

完全雇用が実現してない状況では、わずかでも意義のある公共事業はやったほうが効率的である、と著書は結論づける。それは格差是正などという情緒的なものではなく、社会全体の効率性ゆえである。貧困層のための政策が、ひいては富裕層も利するという視点は興味深い。