『市場検察』

市場検察

朝日新聞の記者の著作。新聞記者でも良い本を書けるんですね。
もちろん検察に厳しい裁判官を説明するのに、杏林大の割り箸事件で無罪判決出したことを引くあたりはろくに知りもしないでわかったようなことを書く新聞記者らしさを発揮しているのだが。あれはどう考えても無罪だし、刑事裁判にする症例でもないのにな。

全体の流れとしては、市場主導主義へと国家が傾斜していく中での検察の変節である。佐藤優氏の『国家の罠』とコンセプトは同じだ。

かつて談合は地方への利益誘導、企業の保護という意味で有効に働いていた。非効率が生じるとしても右肩上がりの経済では大きな問題ではなかった。しかしグローバリズムゼロサムゲームのために許されなくなったのである。かつては大目に見られていたものを取り調べなくてはいけないという検察の逡巡も描かれている。このあたりが新聞記者らしからぬところである。

それにしても検察ってマンパワーがないということがよくわかる。「悪性」でどうみても悪いものに注力すべきであり、灰色は見逃さざるをえないのだということである。医療事故のようなややこしいものを扱うのは彼らも躊躇するだろう。