トカゲの尻尾にされちまった某医師のことを思う。

「専門医の運用に最も向かない地方の公立病院で、輸血も麻酔科のバックアップもない一人産科医長がどうなるか、奴が一番知っていたさ」

このご時世に一人産科医長なんてよほど責任感の強い、真面目な方だったのだと思う。真面目ゆえに大病院へ搬送(丸投げとも言う)という決断ができなかったんだろう。救急車で何かあったら、とか大病院の医師も忙しいだろうから、とか色々考えたんだろうか。ここは俺がなんとかせねば、と考えたのだろうか。
年間40例のカイザーをこなすバリバリの産科医だから、外科医を前立ちにしてもほとんどの症例は無難にやれるのだろう。しかしその腕前がその症例に限っては裏目に出たかもしれない。
十分なバックアップもしないでさんざん働かせて事故が起きれば医師個人に全て責任をかぶせる病院に腹が立つ。いい加減な知識に基づいていい加減なことを報道するマスコミに腹が立つ。

「それこそ状況証拠と推測だけで確たるものはなにもない」