『ユナイテッド93』


登場人物に近づきすぎるでもなく突き放すでもない絶妙なカメラの距離感が気持ち良い。管制官たちの何人かは本人ってのも嬉しい。
ドキュメンタリータッチでありがなら、最小限の盛り上げ演出があっていいね。ただカメラは起こることを追いかけるだけで、メッセージもなにもあったものではない。だがこの映画にメッセージが必要なのか。いや、映画にはメッセージが必要なのか。戦争映画をつまらなくした元凶のひとつは、反戦メッセージを盛り込まなくてはいけないというコンセンサスである。


この映画は、大変な情況で重大な決断を迫られた人々の物語である。乗客らは機を奪い返すという決断を下した。管制官の偉いヒトは全米を飛んでいる飛行機をすべて着陸させるという無謀すぎる決断をくだした。軍人たちは決定的な判断をすることができなかった。そもそもテロリストの断固たる行動が重大な決断に基づくものだった。


カメラは彼らの誰をも褒めたり貶したりしない。その距離感が心地よいのである。