『世界共和国へ―資本=ネーション=国家を超えて』

世界共和国へ―資本=ネーション=国家を超えて (岩波新書)

柄谷行人の本を読むのは久しぶりで刺激的であった。内容は、以前から彼が言っている、資本(自由な交換)と国家(略取と再分配)と共同体(互酬)の三位一体を岩波新書向けに平易に書いたもので、まあそれでも例のごとく理解できたようなできないような、という感じだった。理解できることと面白いか(interesting)は別のことである。
医療は福祉であって、つまり略取と再分配である。また自由診療は自由な交換として立ち現れる。あるいは薬屋さんや材料屋さんも資本の論理、つまり自由な交換をなすものである。現代の医療において共同体的な互酬はあまりないように見えるが、患者家族は時に患者本人以上に(特に患者本人が死亡したときには)重要である。また国家や資本が解体したがっている大学医局も一種の封建的要素を含んだ共同体であるし、各種学会もそのようなものである。
そして今現在の医療崩壊が、この三位一体のいかなる歪みからきているのかということである。日本という一国家の内部でだけ考えることではなく、なかなか難しい。