『父親たちの星条旗』

世界で最も重要な映画作家の一人であるところのクリント・イーストウッドの新作であるということは重々承知していたが、硫黄島に結集する大船団にうっとりし、米軍に猛然と襲い掛かる日本軍に心踊り、ああこんな戦闘シーンがいつまでも続けばいいのになあと思った。そんな即席ナショナリストの僕には2部作の片割れ、『硫黄島からの手紙』のほうが似つかわしいだろうか。

主人公たちを見つめる視線はいつもと異なり、突き放したような感じで、優しさが感じられなかった。ベタベタと付き纏って利用しつくした人々(レイニー・ギャグノンの恋人はその代表だ)に比べれば、優しいのかもしれない。あるいはイーストウッドも彼らを利用しただけなのかもしれない。