『ウェブ進化論』

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)

色々なブログでお奨めされていた本書、やっと読んだ。さすがに刺激的で面白かった。

今年は医療業界的には、大きな変化があった。マスコミの偏向報道に対して医師たちがネットなどを用いて反撃を始めたのである。以前に耳鼻科の医師が不当逮捕されたときは、2chでわーわー言っているに留まったが、2月の福島県立大野病院産婦人科不当逮捕の折には2chだけじゃなく、自らのブログなどで医師らは声を上げるようになったのである。また各種医師会、保険医会、学会などが抗議声明を出した。みなは2ch、m3といった掲示板で連帯し、ブログに意見を書き、そこには建設的なコメントが寄せられた。テレビ局が医者叩き番組を放送すれば、スポンサー不買運動を行った。マスコミの偏向報道を真に受けて医者たたきをする素人衆のブログには批判的かつ論理的なコメントを多数書き付けた。テレビで判ったようなコメントをする現場を知らない医者のブログは炎上した。トンデモ判決には専門家が集い詳細なreviewがなされるようになった。


これらの結果、従来は医者の悲鳴など誰にも届かなかったが、少しずつ取り上げてもらえるようになった。

これらは医師会や学会が音頭をとってトップダウンで行われたのではない。ブログや掲示板から自然発生的に起こった現象である。本書に書かれている、web2.0とはこういうことだろうか。私はこの本を読んで世の中が良い方向に変わるかもしれないという希望を得た。既存のマスコミのいい加減さは大スポよりも酷い。それに比べれば有象無象のブログが氾濫することなどどうってことはない。このブログもどうでもいいブログの一つにすぎないのだ。そして我々は上位1%のブログだけを見ればよい、それで良質な情報を得られるのである。

希望はあるが、道のりは遠い。医師は良くも悪くも専門馬鹿だから、下手すりゃ、大野病院事件のことを知らない、あるいは知っているが重大性を認識していない、なんて人は沢山いる。これらの人たちがもっとネットに参入してくれなければ道は開けない。また世の中では新聞やテレビを鵜呑みにする人のほうが圧倒的多数だろう。これらの人たちに正しい情報が伝わるようになるのはいつの日だろう。

それから病院のIT化であるが、個人情報保護の観点から、どうしてもシステムを「こちら側」に構築しなければならない。これにはかなりのコストがかかり、負担するのは個々の病院なんである。従って、けっこうお金がかかってる割にはショボくて使いにくい「電子カルテ」なるものができあがってしまうのである。これを「あちら側」に置くことができれば素晴らしいのだがなあ。そうすると医療機関同士の連携も大変簡単になるし、個々の病院はアクセスする端末を準備するだけでいいからコストも減る。診療内容が標準化されて医療費削減にもつながると思うんだけど、難しいかなあ。