『さっさと不況を終わらせろ』
- 作者: ポール・クルーグマン,山形浩生,Paul Krugman
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2012/07/20
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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ポール・クルーグマンの新著。専門用語は少なく平易で読みやすい。以下要約。
まず長期の不況の害について解説。
弱い経済が長期間続くと長期潜在力が打撃を受ける。
なぜなら長期失業者が技能を失う、あるいはないとみなされるから。
さらに設備投資が控えられるので景気回復期にボトルネックに早くぶちあたる。
また教師が大量にレイオフされ若者の教育に深刻な打撃を与えている。
結果として成長も雇用も低い軌道に押しやられてしまう。
また過激な排外主義の台頭も無視できない。
この金融危機の原因はなにか?
ひとつは昔の大不況の記憶が薄れて各種の規制が緩和されたこと。
グラス・スティーガル法の廃止がその例である。そして金融機関は過大なレバレッッジをかけ、危機にたいして極めて脆弱になった。
またトップ1%の所得シェアが大きくなった。また最高税率が引き下げられ、富裕層の富がさらに増大した。
中間層は経済成長の果実が受け取れなかった。そして負債に頼るようになった。家計もまた脆弱になった。
学会もこれらの規制撤廃や格差拡大を後押しした。
格差拡大により政治の二極化がすすみ、中道よりの政策は合意がえられにくくなった。
金融政策が無効のときに、つまり流動性の罠にはまったときに何ができるかこれまで議論されてこなかった。
今は政府が最後の借り手となり需要と雇用を支えるべき。削減された地方政府の予算をもどすだけでもかなりの需要創出になる。
オバマの経済救済プログラムはアメリカの経済規模に比べて過小だったために効かなかった。そして財政出動は効果がないという反対派に口実を与えることになった。二極化した議会でさらなる予算を要求するのは難しくなった。
財政赤字はどうなるか?
金利は極めて低い。民間セクターがお金を借りたがらないので当たり前。政府はどんどん借りればよい。
負債の伸び率が、経済成長とインフレを足したものより低ければ問題ない。
流動性の罠にはまると中銀の刷るマネーの量はあまり関係ない。好況にならなければ全般的なインフレにならない。
歳出削減による悪影響をゼロ金利下では利下げによって緩和できない。信任の妖精さんによる金利低下も望めない。
つまらない原因により不況が長引き深刻な結果をもたらしている。さっさと不況を終わらせよう。