そんな厳粛な1日である今日、オイラはラパコレのカメラ持ちをしたり、甲状腺の手術をしてたのである。

それでも今日という日には思うことも色々あった。
この事件については以下のブログでよくまとめられています。

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20080218
http://blog.m3.com/Fight/20080217/2
http://blog.so-net.ne.jp/case-report-by-ERP/20080218

「検察側は、加藤被告が胎盤をはがすのにクーパー(手術用はさみ)を使ったことも問題視」しているようで、その後ろ盾となったのがN大学T教授(専門は卵巣癌の遺伝子診断と化学療法)の発言であったそうな。

「剥離の際のクーパーの使用も適切でない」

卵巣癌の遺伝子診断と化学療法が御専門だからクーパーの使用法などご存じないのだろう。

そこでクーパーって何?ということをまとめてみようと思う。


Sir Astley Paston Cooper(1768-1841)
ノーフォーク出身の外科医。18世紀の偉大な外科医ジョン・ハンターに師事。1808年に動脈瘤に対して、総頸動脈と外腸骨動脈の結紮、1817年に腹部大動脈瘤の結紮、1824年に股関節切断術に成功、19世紀初頭に最も活躍した外科医として知られる。
また熱心な解剖学者でもあり、乳房を胸壁に固定するCooper堤乳靭帯、鼠径部のCooper靭帯にその名を残している。
1820年にジョージ4世の頭部の感染性粉瘤を切除した功績により、準男爵の地位を授けられた。

そんな偉大なCooper先生の名を冠したクーパー剪刀は、先端が丸みを帯びて若干湾曲しているハサミである。長さは色々で15センチから26センチまで。

そしてこのハサミは単純に切ることにはあまり使われない。糸やチューブ類を切るのにはよく使うけどね。

主に剥離に使われます。ヘラのようにしごいて剥離したり、刃先を少しだけ開いて押し切るように剥離したりします。

また、胆道外科の大家二村雄次先生の執筆された「前立ちからみた消化器外科手術」では、癌研究会付属病院の梶谷先生が鈎として用いたり助手の手をシバくのにも使っていたというエピソードが披露されています。

血管や神経の剥離の際には、もう少し幅が狭くて繊細なMetzenbaum剪刀を用いることが多いです。しかし一掻きの大きなクーパー剪刀にはダイナミズムやスピード感で劣ります。クーパー剪刀を大胆に用いることが手術上達のポイントであることは名著「イラストレイテッド外科手術-膜の解剖からみた術式のポイント」にも書かれています。

どんどん出血している子宮から胎盤を急いで剥離する時には、クーパー剪刀は誠に優れた道具であるといえますね。

参考文献
外科の歴史

前立ちからみた消化器外科手術

イラストレイテッド外科手術―膜の解剖からみた術式のポイント