『不況は人災です』
不況は人災です! みんなで元気になる経済学・入門(双書Zero)
- 作者: 松尾匡
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2010/07/07
- メディア: 単行本
- 購入: 17人 クリック: 479回
- この商品を含むブログ (22件) を見る
著者は置塩信雄のもとでマルクス経済学を学んだ人。
しかし不況対策として普通にリフレ政策を主張、それに加えて積極的な財政政策も唱えている。
そしてまともな経済政策を打ち出せない日本の左派政党を痛烈に批判している。
個人的に興味深かったのは、1970年代から新古典派がケインジアンを駆逐した背景を平易に説明していることである。
そして日本では自民党がケインジアン的な政策を押し進めてきたため、欧州とは違った左右のねじれがあると指摘している。これが著者の左派批判につながる。
もうひとつは、完全雇用に至った時の均衡点は、そこに至るまでの経路で変わりうるということだ。つまり小泉政権期のように外需とそれにまつわる設備投資だけで完全雇用までもっていってもそれは極めて脆弱ということだ。実際に日本とはあまり関係のない金融危機で一番ダメージを受けたわけだ。
最後に、今のデフレからインフレにもっていくためにはかなりの額のお金を刷らないといけない、しかしこれは左派にとっては歴史的なチャンスで今まで夢見てきた弱者のための政策をいくらでもできると述べる。この本が書かれたのは2010年の春。左派は歴史的なチャンスをものにできず、経済復活の手柄は右派政党のものになりそうだ。